タミヤ 35156 アメリカ M1A1 ビッグガン・エイブラムス

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1/35 TAMIYA Military Miniature Series 35156 U.S. M1A1 Abrams 120mm GUN Main Battle Tank

 

  • 概要

1992年発売のキットだが、元は1982年発売のM-1エイブラムス戦車(35124)の金型を改修し、湾岸戦争を契機にしてリニューアルされたもの。そのため前製品との区別として強化された120mm滑腔砲が製品名として主張されている。

急遽金型改修してリリースされたためか、実のところ再現度という意味では多く問題を抱えている。車体は元のM1からディテールを引き継いでいるし、砲塔もキューポラ付近の密度に対して防盾周りなどで再現が甘く、履帯の選択など湾岸戦争において一般的な仕様とは言い難い構成になっている。

制作にはプラスドライバーが必須。

 

  • 構成

ダークイエローのランナー5枚とサスの付いたバスタブシャシー、ポリ製履帯とPETシート、ビス一組にナイロンメッシュとデカールが付属。

履帯はポリ製熱溶着ベルト式(T156)で、砲身は左右貼り合わせ+砲口パーツ、ペリスコープの窓用にPET樹脂のクリアシートが用意されている。シャシーは元のM1がモーターライズだったこともあり穴が空いている。成形はタミヤらしくシャープでカッチリした今に通じるモールドで、タミヤの技術が頂点だった時期を感じさせるものだ。合いは一部分を除いていわゆるバチピタであり、当時はバンダイよりも優れた成形技術を持っていたことがわかる。だがところどころに押し出しピン跡が存在する。

転輪のパーティングラインはそれほど処理には苦労しない。さくさくと車体に取付けベルト履帯を張るが調整は不必要。だが上部転輪はそのままガイドの穴にはめるとおかしな位置になってしまう。ピンを削ぎ落とすよう指示があるので見落とさないよう正確な位置に付ける。ハルの貼り合わせでできる隙間は小さいが、砲塔の貼り合わせは盛大に隙間ができるのでせめて正面から目立つ防盾基部あたりはきちんとパテ埋めしたい。またスモークディスチャージャー基部が適当なため固定しにくい。後部バスルラックのネットはナイロンメッシュを説明書のサイズに切り抜く必要がある。これらの点を除けばサクサク進められるストレスの少ないキットだ。

砲身基部の可動部固定には同梱のビスとナットを使う。トイとしての稼働強度を保つための処置だが、スケールモデル視点で見ると硬すぎても困るので微妙な仕様となる。よく行き過ぎた一体化成形やディテールの省略を指摘されるタミヤだが、自衛隊車両や有名戦車なんてのはトイとしての側面も捨てきれないので仕方ないのかもしれない。

 

  • マーキング

アメリカ陸軍 第一機甲師団(デザートカラー) 2種

アメリカ陸軍 第三機甲師団NATO迷彩) 2種

 

  • 総評

安くておっきくて組み立て簡単という旧来のプラモデルらしい魅力があり、初心者にも勧められる出来の良さが備わる良キット。考証やディテールの詰めの甘さなどは後発のM1A2イラク戦仕様では概ね改善されているため、気になるならそちらを選べば良いとも言える。モデラー的には改良版を選べば良いし、ライト層が気軽に取り組むにはこちらでも良いだろう。つまり棲み分けだね。ただ説明書の塗装図が簡略されていてマーキングが説明不足なのは改善して欲しいところ。